『キンタマ離婚』 Gさんは、パソコンとは縁のない小さなレストランバーのオーナーシェフです。 無理に挙げても、愛人のウェイトレスのお姉ちゃんが持ってるメーカー製のテレパソぐらいしか知りません。 お姉ちゃんの部屋にしけ込み、テレパソでニュース番組を見ながら日本の官公庁・自衛隊からのWinnyによる情報漏えい事件を無責任に叱る。Gさんは自分とWinnyについては、その程度の関わりだと思っていました。 しかしそれも、Gさんの店にDVD-Rが投函されるまでのことでした。 DVDの中身はGさんとお姉ちゃんのハメ撮り画像、デジカメでのハメ撮りムービー、そして浮気の証拠になるメールでした。 Gさんは真っ青になりながら、 ・なぜ最近いちげんさんの若い客が突然増え、店のスタッフをしげしげと眺めていくのか? ・なぜウェイトレスの携帯にしか入っていないはずの画像がDVDで届いたのか? ・そういえば、映画はいつもパソコンから見てたよな…… 頭の中をいろんな考えが駆け巡りました。 「……もしかして、おまえWinny使ってるの?」 自分のパソコンに保存してあるはずの撮り映像と同じものを見て、何がどうなったか分からずにパニックを起こしたウェイトレスのお姉ちゃんは、泣きじゃくりながら首を縦に振りました。 その翌日、Gさんは近所に住んでいる知人に呼び出されました。妻の親類です。 「俺が言うようなことじゃないのは分かってるが……知ってるか?」 そう切り出した親類は、2週間ほど前に最近キンタマウィルスで流出したファイルの中から、あるハメ撮り画像が発掘さたこと。 そのファイルの中からメールも調べられ、その内容が地方情報だけのローカルBBSに持ち込まれ、場所と個人が特定されたこと。 その内容のために地方挙げての祭りが起こり、管理者が必死で関連情報を削除していること。 それがGさん、あなたのことだと説明されました。 つまり、お姉ちゃんの部屋でWinnyについて大いに語っているちょうどその頃、TVニュースを見ている裏で動いてたタスクから、お姉ちゃんとのハメ撮りデータは日本国内を駆け巡ってたわけです。 そして今、巡り巡ってGさんの店まで特定され、Gさんの親類が家までやってきた。そういうことです。 妻には黙っておいてくれと懇願するGさんに、 「私はもちろん言いませんが、悪いけどおそらくご近所さんは既にほぼ全員これを見てるでしょうね。私も、私のことGさんの親類だと知らない人からDVDを貰いましたから」と、投げやりな口調で答えました。口止めという以前に後の祭りというか、むしろ全国的な祭は既に終わった後だったのです。 「……それより、Gさんはどうやってこの件を知りましたか?」 そう、そもそもこれは店に投函されていたもの。 エロDVDとしてはイマイチでも、顔なじみのご近所さんであるGさんとお姉ちゃんの顔も声も猥褻物も完全収録された、究極のプライバシー満載DVDです。地方ローカルネタとしてはこんな面白いものはありません。 というわけで、またたく間に近所に出回り、その中で面白がった誰かがDVD−Rを焼き増して直接投函したというわけです。 Gさんが泣こうがわめこうが土下座して口止めを願おうが、もう発覚は止めようもありませんでした。 実際この親類訪問後2日ほどで妻の弟経由で妻にバレてしまい、奥さんが実家に帰りました。奥さん側としては、浮気よりもむしろマヌケぶりのほうに愛想が尽きたようです。 そして1ヶ月。お姉ちゃんは店を辞め、行き先の分からないどこかに引っ越していきました。生まれ育った地元でド派手に不倫バレしてアソコまで公開されたとあっては、おそらく二度と帰ってこられないでしょう。少なくとも一生同窓会には出られません。 もうお店にはGさん一人ですが、アルバイトのウェイトレスを募集しようにも、全く応募者がいません。既にGさんは店員に手を出すというのが定説になったため、嫁入り前の娘を雇わせる近隣の住民はいなくなっています。 自分自身がWinnyを使ってなくても忍び寄る惨事、それがキンタマ離婚なのです。 |